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研究のススメ

通山 薫
川崎医科大学検査診断学教授
(同附属病院中央検査部部長)

タイトルを見ただけで、「もう、うんざり」なんて貴兄・貴女がおられるかもしれません。仕事そのもの(多くの方は臨床検査関係でしょうか、他の領域のお仕事や主婦の方も多いでしょう)に邁進しておられる方は多いと思いますが、こと研究となるとちょっと事情は違うかもしれませんね。「研究」ってごく一部の人々がおこなっている浮世離れした、あるいは仰々しい行為なのでしょうか?

私は川崎医科大学の一角に検査診断学(病態解析部門)という小さな研究室を構えています。もともと血液学を専門にしてきたので、血液細胞、とくに血球分化と機能発現や白血病を中心にした細胞、蛋白、遺伝子の研究をぼちぼち進めているところです。最近は医学部の大学院生や他大学からの研究生、時期によっては臨床検査科の学生さんが出入りするようになり、小部屋の中にしばしば人がひしめき合う有様です。研究室補助員の栃木さんがいつもエレガントに取り仕切ってくれており、若い人たちが集って実験に励んでいる姿は実にほほえましいものです。

博士号を目指して取り組む研究はさぞ大変だろうと多くの方々が思っておられるようですが、正直申し上げてさほどのことではありません。もちろん事前学歴などはクリアしておかないと学位取得のレールに乗れませんが、大学院や社会人枠などの受け入れ制度は大学によってかなり異なるので、本気で博士号を目指す方がおられたら別途ご相談に応じることとして、研究そのものを始めること自体には何の資格もキャリアも必要ないのです。唯一必要なのは研究してみようという意欲で、我々はこれをリサーチマインドと呼んでいます。

学生時代に成績がよかった人がいい研究ができるとは限りません。子供の頃みな取り組んだ夏休みの自由研究・・・日頃算数や理科が苦手な子が案外ユニークなテーマに取り組んで表彰されたり・・・いい研究とはそのようなものなのです。研究遂行にとって有利なのは、ちょっとしたことに興味や好奇心がわく人、固定観念にとらわれない人、あと根気は必要ですね。うまく行かないからといってすぐにめげる人は研究に向きません。長らく主婦をしている方の中には、日常生活のなかでおもしろい工夫をしたり、誰も考えつかないような才覚があって生活をエンジョイしているような人がいますが、こんな人こそ本当は研究に向いていると思います。自ら手がけた研究成果が論文になって自分の名前が世に出ることに喜びを感じてみませんか?これは一種の自己満足かもしれませんが、小さな研究の積み重ねが医学・医療の進歩につながることもあるのです。ちょっと奮起して、あるいは空き時間を利用して私も研究してみようかなと思う方がおられたら、ぜひ検査診断学研究室にご一報ください。

川崎医科大学検査診断学(病態解析)研究室
(内線83616、tohyama@med.kawasaki-m.ac.jp